研究概要 |
四肢の形態形成のメカニズムを解明する目的で,肢形態形成に重要である線維芽細胞増殖因子(FGF10)に着目して研究を行ってきた。FGF10は,ニワトリ胚側腹部より過剰肢を誘導し,予定胚芽形成領域に発現していることから,肢形成のトリガー因子であると考えられていた。さらに昨年,FGF10機能喪失(KO)マウスでは四肢が全くできないことから,FGF10が内在性の四肢形成因子として実際に作用していることが証明された。 本年度は、四肢形態形成におけるFGF10の役割をさらに解明するために,FGF10 KOマウス胚を用いてFGF10の標的遺伝子をRepresentative Difference Analysis(RDA)法により単離し,FGF10のシグナルカスケードを明らかにすることを試みた。胎齢14日のKO胚(ホモ接合体)と野生型胚よりmRNAを抽出,cDNAを合成し,それぞれドライバー,テスターcDNAとしてRDA法を行った。野生型にのみ発現しFGF10 KOマウスには発現しないDNA断片について,現在シークエンス解析中である。現在までのところ65クローンについて解析した結果,シグナル伝達関係の遺伝子が27,細胞周期に関与する遺伝子が19,諸酵素遺伝子が6,膜タンパク質遺伝子が4,既知の塩基配列とホモロジーのない遺伝子が9クローン単離された。また,FGF10 KOマウスの表現型の詳細な解析を行い,FGF10が四肢の形成だけでなく,肺,唾液腺,膵臓,腎臓,毛,歯,下垂体など様々な器官の形態形成に必要であることを明らかにした。
|