研究概要 |
分泌タンパク質Wntファミリーは様々な器官形成の過程で発現し,重要な働きをしていると考えられているが,その働きについては十分理解されていない。そこで,本研究ではニワトリ四肢の発生系を用いて,Wntファミリーの働きの解析を行った。 ニワトリ四肢で発現するWntファミリーの因子を同定し,その発現パターンを調べた。Wnt-3aが頂堤で,Wnt-4が関節形成領域で,Wnt-5aが頂堤と遠位の間充織で,Wnt-7aが背側外胚葉で,Wnt-11が背側と腹側の上皮に近接する間充織で,各々固有のパターンで発現していることを見出した。胚操作後の発現パターンを解析し,背側上皮からのシグナルがWnt-11の発現に必要であり,頂堤からのシグナルがWnt-5aの遠位間充織での発現に必要であることを明かにした。この結果から,Wntファミリーの因子は,上皮からのシグナルによって異なる発現調節を受けることが示された。また,遠位で発現するWnt-5aをレトロウイルスベクターを用いて肢芽全体で発現させると,主に軛脚部の軟骨分化が遅延した。この結果から,Wnt-5aは軟骨分化の調節を行うことで,近遠軸に沿ったパターン形成に関わることが示された。 次いでWntシグナルの受容機構について解析するため,受容体をコードするFrizzledファミリーの遺伝子クローニングを行い,6種類のFrizzled遺伝子を得た。これらのFrizzledファミリーは,Wntファミリーと同じく肢芽において固有の発現パターンを示した。このうち新奇Frizzledとして同定したFrizzled-10は,Wnt-7a8の受容体として肢芽後部間充織でのSonic Hedgehogの発現維持に働くことを明かにした。
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