研究概要 |
TNF-αのAIDS dementia complex(ADC)における役割を明らかにするため遺伝的に正常なC57BL/6(wild)マウスとTNF-α遺伝子欠損マウス(TNFKO)の両群に、マウスエイズモデルとして知られるレトロウイルス(immunosupressive murine leukemia virus,LP-BM5)を感染させた。その結果、WildおよびTNFKOマウスの両群で非感染群に比べ脾臓、肝臓、リンパ節重量は著明な増加が認められた。また脾細胞のB220,CD4,CD8陽性率、LPS刺激に対する脾細胞のチミジン取り込み量もWild,TNFKO両群でLP-BM5感染により有意に変化し、著名な免疫不全を示した。したがって末梢における免疫不全の程度にTNF-α遺伝子欠損による影響は全く認められなかった。しかし、これらのマウスを用いた行動薬理学的試験(Y-maze test,Water finding test,Water maze test等)を行った結果は、Wildマウスでコントロール群に比べLP-BM5感染マウスで明らかな記憶障害が認められ、TNFKOマウスではLP-BM5感染による記憶障害は認められなかった。この結果は、エイズ患者末期に発症するADCにTNF-αが直接関与していることを示唆している(FASEB J,in press)。現在、ADC発症の原因と考えられている脳内の種々因子についてWildおよびTNFKOマウスの両方について検索中である。本研究の結果よりADC発症患者の脳内TNF-αを抑制することはADCを改善させるために重要であることが考えられた。
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