結節性硬化症は乳幼児期に発症し、難治なてんかん発作、知能障害、皮膚病変などを生じる常染色体優性遺伝疾患としてよく知られている。この疾患の原因遺伝子の1つであるTSC1遺伝子は、9番染色体に座位し、hamartinをコードしている。この蛋白は腫瘍抑制機能が予測される一方、これまでに明らかになった他の腫瘍抑制遺伝子との相同性は明かでなく、その機能の詳細はいまだ不明である。しかし、結節性硬化症のもう1つの原因遺伝子であるTSC2遺伝子はtuberinをコードしており、このtuberinは、腫瘍抑制因子としての働きが次第に明らかにされつつある。海外の報告例の含め、これまでのところ両遺伝子の変異を持つ患者間に臨床症状の相違は認められないので、両遺伝子は同様の腫瘍抑制作用を持つと予測されてきた。そこでいまだ明らかにされていないTSC1遺伝子の産物であるhamartinの機能を解析し、特に中枢神経での発現を検索することにより、この疾患の最も主要な症状である脳内石灰化、ひいてはてんかん発作、知能障害の病態を細胞レベルで解析することを目的とした。細胞レベルでの解析のために日本人患者の遺伝子異常を解析したところ、TSC1遺伝子について新たに11種類の新規の遺伝子異常が、TSC2遺伝子について20種類の新規の遺伝子異常を確認した。今回の検討において、TSC2遺伝子の異常を持った患者において精神遅滞の症状がやや重い傾向が認められたが、それ以外は症状の違いは明らかでなく、諸外国からの報告と同じ傾向であった。それぞれの遺伝子異常が神経細胞に与える影響については現在解析中である。
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