研究概要 |
中枢神経系の神経伝達に対するアデノシンおよびアデノシン三燐酸(以下ATPと略)の生理作用およびその分子機構を解明するために、平成10年度は、既に我々が確立している初代培養神経細胞等の培養細胞において、アデノシンおよびATPを細胞より投与し、パッチクランプ法にて記録した全細胞電流に対する効果を検討し、まず、細胞膜の興奮性の調節に関与するのか否かを明らかにした後、更に、二次メッセンジャーに対する特異的阻害剤、保進剤を用いて、その調節作用において、アデノシンおよびATP受容体に関与する細胞内情報伝達機構を明らかにすることを試みた。 その結果、培養神経細胞に発現している、GTP結合蛋白質と共役したP2Y受容体を介した、ATPとアデノシンによるカリウムチャネルの活性化作用、細胞内カルシウム濃度増加作用、さらに、その細胞内情報伝達に関わるGTP結合蛋白質、イノシトール燐脂質代謝、蛋白燐酸化酵素Cの調節機序を明らかにし、ATPおよびアデノシンによる神経活動の抑制機序を明らかにし得た(Journal of Neurophysiology,1998&Neuroscience Letters.1998)。これらの成果を平成10年、第75回日本生理学会大会(金沢)でのシンポジウム「ATP受容体の生理機能と分子機構」で(Japanese Journal of Physiolog,発表予定)、また、平成10年、第6回アデノシンとアデニンヌクレオチドに関する国際シンポジウム(イタリア)で発表した。
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