研究概要 |
現在開発中の体内埋め込み型機能的電気刺激(FES)装置を用いて動作再建を行う場合,テーブルなどにぶつかると予測不可能な外力の影響を受け,体外に装着した外部ユニット(伝送コイル)が位置ずれを起こすことが考えられる.体内の刺激装置に電力伝送を行う伝送コイルが大きくずれると,内部回路の電源電圧が低下してしまい,下肢の運動機能再建時には転倒する恐れがある.そのような危険を防ぐため,本研究では体内埋め込み型FESシステムのパワーフェール対策について検討を行っている.本年度は,台所で作業中の対麻痺者を対象とし,その患者を安全に座らせるための転倒回避動作の検討とその動作筋電図を計測した. 3名の健常被験者(平均年齢21.7歳)より計測した転倒回避動作の筋電図から,内側広筋,外側広筋の筋放電量が大きく,腓腹筋外側頭の放電量はあまり出ないことが分かった.またFES立位時に上肢を用いて作業を行う場合には,体幹を支持させるために台などにもたれかかる必要があるが,その際の立つ位置は提案した転倒回避動作を行う場合にも適していることが確認された. 今後は測定した転倒回避動作の筋電図を台形近似して刺激パターンを作成し,計算機シミュレーションにより転倒回避動作の安全性を検討する必要がある.現状のFES起立では上肢の支持に依存しているため,本転倒回避動作にも上肢の支持が必要となる.よって,転倒回避動作時の上肢のトルクも併せて測定する必要がある.
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