研究概要 |
本研究では,社会復帰を果たした体内埋込型人工心臓装着患者装着患者の退院後の安全管理のために遠隔管理システムの開発を行った.本システムは,人工心臓装着患者は携帯型コンピュータと体内の人工心臓駆動制御システム間の双方向デジタルデータ通信を行う経皮的デジタル情報伝送システムと,患者携帯コンピュータと病院内ホストコンピュータ間の双方通信を行うPHS通信部から構成されている.人工心臓装着患者は,さらにGPSを携帯し,PHSにより患者位置情報も病院内ホストコンピュータに伝送する.病院内ホストコンピュータでは,体内の駆動制御システムより送られてくるモータ回転角度とモータ電流より,ニューラルネットワークにより人工心臓拍出流量及び動脈圧の推定を行い,リアルタイムでホストコンピュータディスプレイ上に表示する.経皮的情報伝送システムの体内ユニットの大きさは直径40mm,厚み6mmであり,山羊を用いた長期埋込実験により経皮的情報伝送システムを評価したところ,データ伝送速度34800bps,消費電力0.012Wの消費電力で,直線距離で7cmの範囲で87日間安定な動作を確認するとともに,良好な皮下埋め込みの装置性の結果を得た.経皮的情報伝送システムを含めPHSを用いた遠隔管理システムを札幌-福島間で,札幌を人工心臓を装着した患者側,福島にホストコンピュータを設置し伝送実験を行った結果,安定な血圧及び人工心臓拍出量の推定ならびに患者位置情報,人工心臓駆動用電池容量に関する情報を遠隔的にモニタでき良好な結果を得た.以上より,本研究で開発を行った遠隔管理システムは人工心臓装着患者の安全管理にきわめて有効と思われる.
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