研究課題/領域番号 |
10831005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
談話(ディスコース)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山口 恒夫 信州大学, 教育学部, 教授 (60115384)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1999年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | パターナリズム / 談話分析 / インフォームド・コンセント / 教育関係 / 医師・患者関係 / 会話分析 / 自己決定権 |
研究概要 |
本研究は、医療者―患者関係における両者の語りの分析を通して、医療者の「パターナリズム」がどのような談話(discourse)に現れるのかを調査研究するものである。2カ年計画の研究の2年目にあたる今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.医師の協力を得て患者への説明場面を録音し、「説明」を分析するためのカテゴリー設定の検討を行った結果、昨年度末に設定したカテゴリーを以下のように修正した。治療者の語り[直接的発現:(1)言葉や図等による説明、(2)誤りを正す、(3)応答、(4)促し・説得、間接的発言:(5)質問、(6)患者の感情の受容、(7)勧告・提案]。患者(家族)の語り[自発的発言:(8)苦痛・症状、心情の訴え、(9)要求・提案、(10)質問、受動的発言:(11)応答・あいづち、(12)促し・説得への応答、(13)勧告・提案への応答]。その他[(14)患者・家族間の語り、(15)医療者間の語り、(16)独白、(17)沈黙・とまどい・混乱]。 2.4名の医師(4医療機関)の協力により録音された「説明」(13ケース)を4秒単位で区切りマトリックス表を作成し、各単位毎にカテゴリーをあてはめる談話分析により明らかになったことは以下の通りである。(1)医療者の発言率は、平均52.2%であり、一般の医療面接における医療者の発言率に比して低い。医療者が一方的に説明するというパターナリスティックな医療面接が少ないということは、患者の自発的発言率にも表れており、そのことは「医師・患者自律型インフォームド・コンセント」に属するケースが13ケース中8ケースにのぼったことにも符合する。(2)13ケースの分析から、正の相関を示したものは、患者発言率と患者発言誘発率の関係、患者発言誘発率と患者発言持続率の関係、及び医療者関節発言率と患者発言誘発率の関係であった。さらに、医療者の発言率と医療者間接発言率との間に、はっきりと逆相関の関係が見られる。医療者の発言率が高まると、間接発言率が低くなるということは、医療者がイニシアチブをとる場面であればあるほど、医療者の説明・説得といった直接発言が増えるということを示している。(3)医療面接においては、医師は患者に対して治療や病状についての情報を「与える」という役割を負っている。従って、その役割を意志が強く意識する場合は、医師が会話の主導権を握り、情報の「受け手」としての患者が情報を的確に聴き、理解できるように言葉を重ねて説明するという形の会話のパターンが構築されやすい。
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