研究概要 |
Sweden型の遺伝子変異を有するβAPP695を過剰発現するtransgenic mice(APPsw mice)を神経病理学,生化学,行動学的に検索した.(1)8カ月齢から巨大なCored plaque(CP)が大脳皮質,海馬,嗅脳に出現し加齢とともに増加した.12カ月齢でDiffuse plaque(DP)と大脳表層・皮質内小血管にAmyloid Angiopathy(AA)が認められた.これらはN末端とC末端側が修飾されたAβ分子種からなりたっていた.CP周囲のdystrophic neuriteにβAPP,異常リン酸化tauの蓄積が認められた.神経原線維変化は見られなかった.Coreでは神経細胞とシナプスの有意の減少がみられた.(2)8ヶ月齢の脳内Aβ40,Aβ42はそれぞれ1,656pmol/g,250pmol/gであり,以後加速度的に増加し脳に大量のAβ蓄積が確認された.(3)受動的回避試験では8カ月齢から回避行動の潜時が短縮し始め,8.5カ月齢から有意差がみられ記憶障害が出現したと考えられた.さらに,脳内Aβ沈着におけるApoE4の効果を明らかにするため,これらのAPPsw miceにラットApoEを過剰発現するTgを交配させ,βAPP(+)ApoE(+),βAPP(+)ApoE(-)のTgを作成し2群間で比較した.12カ月齢のApoE(+)TgではCP,DP,AAの程度がより顕著であった.同時期のApoE(+)Tg脳ではApoE(-)Tgに比べてAβ40が12%,Aβ42が60%ともに増加していた.ApoE(+)Tgの血漿中ではApoE(-)Tgに比べてAβ40が40%増加していた.以上の結果から,ラットApoEは血漿中Aβ量を増加させるとともに脳内Aβ沈着を促進することが明らかとなった.
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