研究概要 |
本研究では.聴取者の動きに追従して頭部伝達関数の切りかえを行うことにより,聴取者の動的な動きに対応することが可能な,音空間再生システムを構築した.このシステムは,50MFLOPSのDSPを複数個使用したもので,頭部の動きに対し,13msという極めて短かい時間遅れで頭部伝達関数を変化させることが可能となった. また,聴取者の頭部の運動を許した場合と積極的に運動を許した場合の音像定位能力について聴取実験を行った.この実験では,刺激音として.低周波数帯域雑音,高周波数帯域雑音,広帯域雑音を用い,また持続時間を100msから3sまで変化させ,水平面内の音像の定位精度との関係を調べた.その結果,低周波数帯域雑音について,特に,頭部回転の影響/効果が大きく表われることが明らかになった.また,頭部を積極的に移動させて音空間知覚を行わせたときの,頭部運動のパターンを運動センサーを用いて詳細に測定した.その結果,頭部の回転は,正面と音像の方向の中間の方向までに留まる場合が多いことや,水平面の定位を行わせているにもかかわらず,縦方向の頭部運動がはっきりと観察されることなどの興味深い知見を得た. 上記のシステムの完成により,遅れ時間の検知限,弁別限を明らかにするための実験が可能となった.実験の結果,頭部伝達関数の遅れ時間の検知限が約50msであること,また弁別限は遅れ時間が100msを越えると極めて大きくなるとの,重要な知見を新たに得ることができた.
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