研究概要 |
当初は自動化・電化を当然のしかも新しいこととして研究の目標を立てていたが,「ひとの知恵」の大切さについて福祉関係の方たちから学び,「福祉のまちづくり」は決して工学的なものでなく,"文系的な"視点が大きいと感じた.これまでのシステム手法における,外的な刺激(入力)の評価方法は既定のものであってシステムはそれを受身的に受け取るというのと異なり,この場合のシステムである「ひと」はそれを本人の独自の視点で「刺激の中まで入り込んで」認識・評価しようとする姿勢を持つ.これをシステム設計に活かしていくことが必要で,これは基本的には,人々が(福祉の)システムのことをよく承知していて,互いに手を貸しあうことができることといえる.本研究においては,(1)IT指向の福祉システム開発の視点,とともに,省エネルギーとともに真の意味での快適な生活空間の構築のために,受身的でなく(2)文理融合型の視点を得て積極的にシステムに関わる姿勢が保てる形での開発が必要であり,そのためには、これまでのad hocなやり方でなく,engineeringとしての統一的な視点で知恵を活かす必要がある.そのために、(3)「小物,道具感覚」の設計視点の導入,を提案した.小物という視点では,従来は機械要素中心的であった議論を,ひとが五感を通じて使うものを対象とした形へと拡大させていくことが必要で、道具感覚という視点では「ひとの知恵」を整理し小物という視点とつなぐことが必要である.さらに、(4)視覚,聴覚,触覚の複合的な刺激に対するひとの快不快反応の機序解明に関わる基礎的な知見を得た。「ひとの活力」の社会への投入促進と互いの信頼感育成により,快適度に対する精神的心理的基盤を高めることができる.これにより,ひとりひとりの身体的活性化が達成され低コストでありながら、安心できる生活空間が形成される.福祉のIT化はこうした基盤の上に立って初めて有効なものとなると考える.
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