研究概要 |
放散虫および有孔虫の細胞内に共生するプロトプラスト状の藻類細胞を単離し,培養をおこない共生藻の多様性を探査した。その結果,有孔虫では底生のSorites orbiculusからはNitzschia sp.,Entomoneis sp.Nanofrustulum shiloiが,浮遊性のGlobigerina sp.からはAmphora roettgeriが,それぞれ被殻を形成し同定に成功した。また,放散虫Sphaerozoum fuscusmから単離,培養した珪藻は,透過型および走査型電顕観察によりMinutocellus polymorphusであることが判明した。培養細胞は直径が1.5〜4.4μmで,被殻形態に若干の奇形が見られたが,18SrDNAの塩基配列の解析により,形態的に共にキマトシラ科を構成するとされるCymatosiraおよびPapiliocellulusと,単系統を構成することがわかり,分裂の結果生じる矮小被殻をもつ個体の同定に対し,分子系統学的方法の有効性が確かめられた。また,Globigerina sp.から単離,培養された球形の無鞭毛の藻類は細胞内の微細構造からPelagococcus subviridisに,また18SrDNAの解析からはPelagomonas calceolateに類似しているものであった。 また,共生藻の放散虫体内への取り込み経路を探った。放散虫のうちのSpumellaria目とNassellria目の種について,共生藻のサイズと,放散虫本体の閉口部の有無・サイズについて比較検討を行った。Nassellriaでは化石種との比較および現生種のFIBによる切断観察により,頂部にある小さな孔が中心嚢に続いていることが明らかになり,この中を通って伸びる触手による共生藻の捕獲が考察された。Spumellariaについては,中心嚢はメッシュ殻におおわれており共生藻は存在しないとされていたが,UV光による葉緑体自家蛍光の観察で,メッシュよりもサイズの大きな共生藻が,一般的に含まれていることがわかり,その捕獲方法についても考察をおこなった。 さらに,黒潮海域に生育する珪藻種の多様性を明らかにする一環として,伊豆諸島式根島沿岸域に生育する着生珪藻Cocconeisの分類学的検討を行ったほか,南西諸島の海域珪藻のフロラ分析をおこなった。
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