研究概要 |
ミトコンドリアをもたない真核生物の系統的位置を、さまざまな分子種の配列情報データに基づく分子系統樹解析により総合評価することを目的として研究を進めた。 これまでの研究において、以下に示す単細胞真核生物種(ミトコンドリアを有するものも含む)について、培養条件を確立し、核酸の大量抽出を行なうとともに、継代・維持を継続した:Giardia lamblia(Diplomonads),Trichomonas vaginalis, T. tenax(Trichomonads),Entamoeba, histolytica(Entamoebidae),Trypanosoma, cruzi(Euglenoids),Blastocystis hominis, Encephalitozoon cuniculi, E. hellem(Microsporidia),Mastigamoeba balamuthi。また、ミトコンドリアをもたない寄生虫でアユに寄生するGlugea plecoglossi(Microsporidea)については、培養ができないため、大量のサンプルを採取して核酸抽出を行った。 こうした状況のもと、平成10年度には、G. lamblia, T. vaginalis, E. histolytica, G. plecoglossi, E. hellem, E. cunuculiのそれぞれの生物種について、イソロイシン-およびヴァリンtRNA合成酵素の遺伝子解析を行った。さらに平成11年度には、G. lambliaのリボソーム蛋白質L29、T. vaginalisのリボソーム蛋白質L1、E. hellem, E. cuniculi, G. plecoglossi, E. histolyticaのミトコンドリア型熱ショック蛋白質70、B. hominisの細胞質型熱ショック蛋白質70、M. balamuthiのペプチド鎖伸長因子EF-1αおよびEF-2の遺伝子解析を行った。 これらのデータを含め、さまざまな分子種によるアライメント解析、分子系統樹解析を網羅的に実施しそれらを総合評価した結果、(1)ミトコンドリアをもたない真核生物に由来する配列はいずれも通常の真核生物型の特徴を有する、(2)ミトコンドリアをもたない真核生物のいずれもが進化の過程でミトコンドリアを2次的に喪失した、(3)B. hominisはStramenopiles(褐藻、珪藻、卵菌など含む分類群)に属しStramenopilesはAlveolata(繊毛虫、双鞭毛藻、Apicomplexaなどを含む分類群)に近縁である、などの点に関しそれらの可能性の高いことを明らかにした。
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