研究概要 |
携帯電話やPHSなどの携帯無線機の普及に伴って,アンテナから放射された電波電力の人体への吸収が問題となっており,アンテナを設計する際に吸収電力を定量的に測定しておくことが重要となっている.本研究では,人体モデル及びその近傍に置かれた無線機を方位角方向に回転し,受信アンテナを仰角方向に回転させて無線機からの電波を受信し,その電力を積分することにより高速・高精度で人体による吸収電力を測定する方法を確立すること,並びに現実に近い人体モデル(ファントム)や実際の無線機匡体上に設けられたアンテナを用いて,電力吸収の少ないアンテナ構造を明らかにすることを目指して研究を行った.その結果,以下の知見が得られた. 1.ダイポールアンテナからの放射効率を求めてランダムフィールド法による測定結果と比較し,ランダムフィールド法に比べて測定精度が高いことを明らかにした. 2.回転装置を計算機で制御することにより,放射効率測定の自動化と高速化を図った. 3.ヨーロッパの標準(COST244)で定められた人体頭部のファントムを用いて近傍のダイポールアンテナの放射効率を測定し,FDTD(Finite Difference Time Domain)法による計算結果と比較することにより測定精度の高さを示す共に,立方体ファントムと球ファントムでは人体に吸収される電力が異なることを明らかにした. 4.人体への吸収電力が少ないアンテナを得るために,八木・宇田構造のモノポールアレーアンテナ,並びに無線機内蔵型のループアレーアンテナをFDTD法により設計し,放射効率の測定を通じて効率向上を確認した.
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