研究概要 |
携帯電話やPHSなど,人体近傍で使用される携帯無線機器の普及に伴い,機器の設計開発という観点から,人体によるアンテナ特性への影響を定量的に評価する必要性が高まってきている.一方,これら機器より発生する電磁界が人体へ及ぼす影響を定量的に評価する必要性がより高まってきている.しかしながら,実際に人体を用いてこれら評価を実験的に行うことは困難である.このため,人体の電気的および形状的特性を考慮した数値解析用および実験用人体モデルを構築するとともに,これらモデル用いたシミュレーションによる検討方法およひ実験的検討方法の確立が必要不可欠である.このような背景を踏まえ,電磁波の人体に関する影響評価のための標準人体ファントムの開発に関する研究を行った. 平成10年度は,マイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発し,これを利用した人体と高周波近傍電磁界との相互影響評価システムを考案した.また,人体頭部リアルモデルファントムを開発し,実際にSAR評価を行った.平成11年度は,前年度開発したファントムの保存性を高めるべく,グリセリンを主成分としたマイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発した.また,警察,消防,放送分野等で用いられる150MHz帯アンテナと人体との相互影響評価について検討を行った.以上の成果により,人体と高周波近傍電磁界との相互影響評価するための簡便なシステムを構築できた.また,保存性に優れたマイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発できた.携帯無線機器の設計開発,およびこれら機器より発生する電磁界が人体に及ぼす影響を定量的に評価する際,本成果が活用されることを期待したい.今後の課題として,本評価システムの高精度化およびファントムのさらなる改良を目指す.
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