研究課題/領域番号 |
10837004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
電磁場環境
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山本 博 金沢大学, 医学部, 教授 (00115198)
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研究分担者 |
米倉 秀人 金沢大学, 医学部, 助教授 (80240373)
細野 隆次 金沢大学, 医学部, 教授 (40019617)
山田 外史 金沢大学, 工学部, 教授 (80019786)
原田 真市 金沢大学, 医学部, 助手 (90272955)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
1999年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 低周波変動高磁場 / DNA合成 / ミスマッチ修復 / RNA合成 / 熱ショック / 生体ストレス / 遺伝子 / 高磁場 |
研究概要 |
超伝導マグネット、リニアモーターカー、磁気共鳴画像化診断装置(MRI)等の新しい電磁気素材・機器の登場により、現代人は嘗て経験したことのない高磁場とくに低周波交流高磁場に遭遇する機会が増えつつある。が、高磁場が生体に一体どのような影響を与えるかについては未だ不明な点が多い。そこで本研究では、低周波交流高磁場の生体作用とくに遺伝子機能への影響を解明することを目的とする。 初年度・次年度研究とも当初計画通り順調に進行し、以下の成果を得た。 1.ポリ(dA)鋳型、オリゴ(dT)プライマー、[^3H]TTPまたは[^<35>S]dCTを含むヌクレオチド基質とKlenow酵素からなる試験管内DNA合成反応を60ヘルツピーク値1テスラの高磁場暴露・非暴露下に行った。その結果、(a)DNA合成速度、(b)DNA合成の忠実度とも有意な差がなく、これはKlenow酵素が3'→5'校正エキソヌクレアーゼ活性を欠いた場合にも同様であった。(c)1テスラ変動高磁場は、がんや神経疾患の発症と関連づけられているDNAの滑り合成にもほとんど影響をおよぼさなかった。 2.レポーター遺伝子(lacZ)にミスマッチ変異を有するファージDNAをrepair-proficientなHeLa細胞抽出物と1テスラ高磁場の存在・非存在下でインキュベート後、repair-deficientな大腸菌変異株(mutS)に移入してXgalを含む培地にプレーティングし、形成される青色/無色プラークと混合プラークの比率からミスマッチ修復効率を算定した結果、高磁場印加の有無で差がなかった。 3.ポリ(dA-dT)配列を鋳型に大腸菌RNAポリメラーゼによる試験管内転写を行い、低周波(60ヘルツ)高磁場印加時と非印加時におけるヌクレオチド基質取り込み速度とRNA合成のエラー頻度を比較した結果、0.5テスラまでの磁場印加では両者とも非印加時に比し有意な変化を示さなかった。 4.レポーター遺伝子(lacZ)上流に熱ショックプロモーターを有する発現ベクターを導入した線虫C.elegansに高磁場を印加後、X-galで染色してlacZがコードするβ-ガラクトシダーゼ活性の発現を調べた。その結果、60ヘルツ0.5テスラの磁場印加により、通常では誘導が認められない温度下(27℃)でβ-ガラクトシダーゼの発現が観察された。この誘導の程度と磁場強度との間には相関傾向が認められ、また、強磁場は熱ショックプロモーターの熱感受性を増強させることも見い出された。 したがって、ピーク値1テスラまでの低周波変動高磁場は、DNA(=遺伝子)の複製・修復・転写過程自体には変化を与えないが、生体ストレスの一種となりうると考えられた。
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