研究概要 |
本研究の本年の主たる目的を,碍子等の絶縁機器が,劣化から破壊にいたり事故となることを,未然に知り防ぐための対策法を提供すること,及び各種通信系統への妨害波の発生源を特定し,良好な通信状態を維持するための基礎資料を得ることとした。そこで平成12年度には,配電用碍子からその経年劣化等の理由により放射されるVHF波帯電磁雑音を,複数の広帯域アンテナで受信し,到達時間差法により位置標定することを行った。一般に劣化状態の碍子から放射される電磁波は,部分放電に伴うものであるため,例えば背景雑音と比べて,その振幅が小さいく検出が容易でない。そこで,近年信号処理の分野で開発され研究が活発な,ウエーブレット変換を,信号処理に適用し,実質的な信号対雑音比を上げることとした。さらに現場でこの種の手法を用いる場合,劣化碍子が複数存在し,電波源としては複数存在する場合も考えられるため,複数の部分方電源発生位置を推定できる測定法及算法を提案し,模擬実験で検証した。さらに部分放電電流と,放射される電磁波との因果関係を明らかにするため,部分放電電流と放射電磁波の同時測定も行った。結果については,必ずしも明確な因果関係を得るまでには至ってはいないが,定性的な理解が得られている。すなわち対象となる,碍子の形状に依存して,部分放電電流形状の異なること,その結果放射される電磁波のスペクトが異なるが明らかとなり,電磁波のスペクトル測定により,放射源の推定を行い得る可能性を示すことができた。この点についての,定量的な理解は今後の課題となっている。
|