研究概要 |
電磁界の細胞への影響を検討するために、ミトコンドリア活性と細胞呼吸,細胞の形態変化と細胞接着,細胞内外のイオンの変化に着目した。 1.磁界曝露によるミトコンドリアエネルギー活性への影響 実験の擾乱となりうる細胞の初期状態を一定に揃えるために血清飢餓培地を用いた。さらに,細胞周期をG0/G1期に合わせた。実験は,MTT法を用いて行った。磁界強度100〔mT〕を細胞に曝露すると,ミトコンドリアエネルギー活性は,非曝露群の約1.5倍程度活性が高められることがわかった。 2.磁界曝露による細胞呼吸への影響 細胞呼吸の変化は,非常に微小である。従って,培地中に含まれる酸素濃度の変化を細胞呼吸と定義した。磁界強度100〔mT〕を曝露すると,非曝露群よりも約1.3倍程度細胞呼吸量が促進し,ある一定のレベルまで安定に高められることがわかった。 3.磁界曝露による細胞内外のイオン濃度の変化 磁界曝露によるATPとカルシウムイオンの関係に着目するために,まず磁界とATPの変動について考察した。培地中にATPを添加し,細胞代謝を吸光度により調べた。非曝露群では,ATP添加直後の細胞代謝は,大幅に高められるのに対し,磁界曝露群では,ATP添加直後であっても,増加は認められなかった。この現象からATPとカルシウムイオンの検討を続ける。 4.磁界曝露による細胞形態の変化と細胞接着への影響 細胞形態の観察は,位相差顕微鏡とCCDカメラで,特定の細胞を連続的に撮影した。形態変化では,細胞の側枝の発現に着目した。磁界曝露群では,非曝露群に比べて,約40%発現が抑制された。側枝の発現が抑制される原因を探るため,クリスタルバイトレットを用いて細胞接着活性を調べた。磁界曝露群では,約30%抑制されていることがわかった。
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