研究概要 |
香川県三豊郡における一ヶ所のリハビリテーション病院において,脳血管障害の既往を有する療養型病床入院患者で嚥下障害をもつ者10名(男性5名,女性5名,平均年齢79.4歳),嚥下障害をもたない者46名(男性19名,女性27名,平均年齢79.0歳)およびデイサービスを受けている在宅高齢者21名(男性9名,女性12名,平均年齢80.6歳)について対面調査を行った.調査項目は,口腔および摂食機能に関する自覚症状の問診,口腔内診査(歯,歯周組織,舌),口腔周囲の診査(口唇,頬,顎関節),義歯の診査,嚥下機能検査,唾液検査,咀嚼能力診査とし,さらに病院側の協力を得て,ADL,摂食嚥下能力に関するグレード,看護度,食事形態,服用薬剤について調査した. その中から,天然歯もしくは義歯によって臼歯部の咬合支持が確立している者を選択し,入院患者28名(男性14名,女性14名,平均年齢76.5歳)とデイサービス患者14名(男性7名,女性7名,平均年齢81.3歳)との間で,唾液分泌速度,唾液緩衝能,唾液中のカンジダ菌数,咬合力,咀嚼能率(グミゼリー)について比較を行った. その結果,入院患者群はデイサービス群と比較して唾液分泌速度,唾液緩衝能が低下する傾向が見られた.唾液中のカンジダ菌数については,両群とも一般の高齢者と比較して非常に菌数が多かった.唾液量については、摂食嚥下能力に関するグレードや食事形態と相関する傾向が見られた.咬合力および咀嚼能率についても,入院患者群はデイサービス群と比較して低下する傾向が見られたが,個人間のばらつきが大きくさらに因子の検索が必要と思われた. 本調査から,リハビリテーション病院における脳血管障害患者の咀嚼機能のプロフィールが把握され,その影響因子に関する示唆が得られた.
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