研究概要 |
健康成人,老年者の通常歩行あるいは歩行速度を変化させた時(若年者のみ)の下肢筋の運動単位制御を明らかにする目的で,表面筋電図周波数を非線型システムMemCalcで分析し,以下のことが示唆された。 歩行周期における下肢筋活動は,遊脚相より立脚相に強かった。TAでは立脚相初期の顕著な活動には遅筋線維と速筋線維に分布する運動単位をバランスよく発火,漸増し制御していた。VLでは立脚相初期の強い筋活動には,選択的に遅筋線維に分布する小さな運動単位を抑制し,速筋線維に分布する大きな運動単位を優位に発火,漸増させて制御していた。一方,MHの立脚相初期の強い筋活動は,選択的に速筋線維に分布する大きな運動単位の発火,漸増を抑制し,遅筋線維に分布する小さな運動単位を優位に多く漸増させて制御していた。 MGは立脚相全般に活動し,特に中期にその筋活動が最も高く,これは速筋線維に分布する大きな運動単位がより多く発火,漸増しており,歩行時の蹴り出しの移行期に重要な役割を演じていると考えられた。 各筋による運動単位制御の特徴は、歩行速度が変化した時でも同様の傾向がみられた。 65歳以上の健康老人の通常歩行では,若年者より下肢筋の筋活動は高く,この制御には各筋により違いが見られた。すなわち,老人におけるTAは,遅筋線維,速筋線維に分布する運動単位をバランスよく漸増させて制御していることが示唆され,一方,老人におけるMG,MHでは,速筋線維に分布する大きな運動単位を多く漸増させて制御していることが示唆された。また,VLでは,選択的に遅筋線維に分布する小さな運動単位を,多く漸増させて制御していることが示唆された。
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