研究概要 |
対麻痺者の実用的歩行機能再建のため,スライド式仮想軸付き内側単股継手を開発し,さらにモータによる動力付与を検討した.簡便性で優れる内側単股継手に仮想軸を採用することで,歩行時の遊脚が容易になった.モータ力源付与は歩行時の上肢の負担を軽減した.股継手への内外転機構追加は回旋歩行を容易にした. 1.股継手の軸位置乖離問題への対応:内側単股継手は簡便性に優れるが,継手軸と解剖学的な股関節とに高さの乖離があり,歩行時,遊脚の際に過度の骨盤回旋を生じる原因となっていた.そこで,より高い位置に仮想軸を有するスライド式継手を開発した.対麻痺者5例における歩行実験では,仮想軸位置を会陰上60mmと設定した場合に最も快適な歩行が達成できた.また,従来の内側単股継手と比較した動作分析では,骨盤回旋が減少する一方,歩幅,歩調,歩行速度の増加を認めた. 2.動力付きスライド股継手の検討:歩行時の上肢負担軽減のため,モータにより力源付与した股継手を開発した.股継手回転速度を15度/秒に設定し対麻痺者1例で試行した結果,歩行時の脈拍増加率の減少,上肢負担度の減少など一定の効果を認めたが,歩行速度はむしろ低下した.そこで,モータのギア比を再検討し,股継手回転速度を50度/秒に変更した結果,歩行速度が通常の装具歩行に近づいた.操作方法の検討では,左右別のマニュアルスイッチをon持続時駆動とする方法が選択された.しかし,杖を持ちながらスイッチ操作を行う点で,煩雑性,手指の疲労が問題として残った. 3.股継手の精緻化:行動選択の多様性のため,股関節自由度を屈曲・伸展に加えて内旋・外旋を各5度ずつ許容する股継手を開発した.健常者1例と対麻痺者1例における歩行実験では,立脚期の足部回旋が減少した.立位安定性は変わらず,回旋歩行は容易になった.
|