研究概要 |
イヌの精巣腫瘍をWHO分類に従い、病理組織学的に4つ型に分類した.免疫組織化学的検索では,インヒビンを分泌する細胞はライディッヒ細胞であり,そのサブセットはインヒビンBである可能性が強く示唆された.担腫瘍精巣と正常精巣とを対比させるために,犬の正常精巣におけるインヒビン分布細胞の同定を行なった.正常精巣内におけるインヒビン分泌細胞はライディッヒ細胞に限局しており,かつインヒビンβBに陽性反応を示したことから,正常精巣においてもライディッヒ細胞主と同一の結果が得られた.以上の知見はラットの場合と異なり,イヌおいては腫瘍化してもその分泌細胞は変化しないことが解った.精巣腫瘍における性腺ホルモンの分泌動態を知るために,免疫組織化学的に検索した.ライディッヒ細胞腫ならびに正常精巣のライディッヒ細胞の一部において抗アロマターゼ抗体,抗3β-D抗体,抗17β-D抗体陽性反応が得られ,テストステロンの合成分泌が示唆された.性成熟によるインヒビン分泌細胞の変化は,イヌでは性成熟前にはライディッヒ細胞ならびにセリトリー細胞であったものが,性成熟後にはライディッヒ細胞に変化した.かつセリトリー細胞も潜在的にはインヒビン分泌の能力を持っていることが解った.ライディッヒ細胞腫の場合,血中インヒビン濃度は他の型の腫瘍よりも,10倍〜20倍ときわめて上昇し,腫瘍を摘出した例においては腫瘍摘出後には激減していた.この結果から,イヌの性腺腫瘍のうちインヒビンを分泌しているのは,ライディッヒ細胞腫であることが明らかになった.また,ライディッヒ細胞腫ではFSHの濃度は1/2〜1/3に抑制されていたが,腫瘍の摘出をした1例ではFSHの濃度が上昇していたことから,分泌インヒビンは機能を有するホルモンであることが示唆された.
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