本研究の目的は、外国人留学生が日本において学業を達成する際の困難を克服する手がかりとして外国人留学生の時間的展望の特徴を日本人との比較において明らかにすることである。時間的展望尺度を日本人と外国人留学生に実施し比較するとともに留学生カウンセリングにおける応用について考察することにある。 そのために、昨年度に引き続き、本年度の研究実施計画は以下の4点であった。 (1)時間的展望についての先行研究とくに、文化との関わりによる時間的展望を問題とした文献を収集・吟味し、理論的な枠組みを形成、発展させる。 (2)日本語版時間的展望の質問紙を日本人大学生(1年生)に実施し、尺度の信頼性と妥当性を検討するとともに、留学生に対する統制群としてのデータを確保する。 (3)多様な文化的背景をもつ外国人留学生に(2)と同じ調査を来日1年目に実施し、その結果を検討して(2)と比較する。 (4)適応上の問題を持つ留学生を対象としたカウンセリングにおいて時間的展望尺度を導入し、その実践的な意義を検討する。 昨年度に引き続き(1)の課題をおこない、文献の収集と文化と時間的展望についての理論的な検討を行った。さらに(2)(3)については、予備的な検討を行ってきており、今後の実施の準備を行ってきた。また、(4)の課題については、留学生カウンセラーの研究協力をえて、時間的展望の問題と留学生援助との関係を検討してきている。特に、時間的展望とアカルチュレーションの態度との関連についての考察をすすめたのが今年度の特徴である。
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