研究概要 |
本年度の研究においては、中国に進出しているアパレル企業の対中戦略について考察し、企業側が分析した中国の高度消費文化の現状を明らかにするために、これまでに収集したデータをコンピュータに入力しデータベース化すると同時に、中国との合併企業(北京・上海・広東)に10万ドル以上の出資をしている企業66社に対して、アンケート調査を実施し、14社から回答を得た。この14社の内、中国国内で販売しているのは4社であった。4社の内、積極的に事業展開を行っているのは(株)オンワード樫山と(株)ボブソンの2社であった。ブランド名ではICBとBOBSONである。ICBについては、中国を含めた8ヵ国で世界同一価格(\19,000-\59,000)・同時発売という形で1995年より展開されており、当然、中国では高所得者をターゲットとなっている。BOBSONはボトムスだけの展開で、290〜550元という価格帯で販売。国営百貨店での同タイプのものが190元前後なので、BOBSONの場合は中〜高の価格帯と言える。ICB、BOBSONともに日系の百貨店で販売されている(ICBは百貨店ショップに卸し、BOBSONは百貨店平場)。残り2社は基本的には100%日本へ輸出しており、中国国内での販売はごくわずかである。 以上のことから分かったことは、中国は生産地からマーケットとしてとらえ始められているという先行研究が多かったが、いまだ中国で生産されているアパレル製品のほとんどは日本へ輸出されており、中国国内で販売されるケースはごく少数である。しかし、これは消費文化が高度化していないことを表しているのではなく、代金回収の不安、インフラの未発達、労働意欲の欠如といった合併事業の難しさそのものが原因である。アンケートで回答を得られなかった企業の中でも、ワールドやベネトンジャパン、ダーバンなどが中国国内でブランド展開を行っており、このようなケースから、中国における消費文化の高度化が伺える。
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