研究課題/領域番号 |
10871062
|
研究種目 |
萌芽的研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語・英米文学
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
滝川 睦 名古屋大学, 文学部, 助教授 (90179573)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 1999
|
研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1999年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1998年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
|
キーワード | インタルード / 近世初期英国 / 観客論 / 宮廷仮面劇 |
研究概要 |
今年度は、前年度の研究成果を応用・発展させ、劇作家・インタルーダー(interluder)とパトロン(王侯・貴族)のあいだに循環する演劇的ダイナミックスに焦点を合わせながら、近世初期英国のインタルード(interlude)を観客論的視座から分析した。具体的な研究実績は以下のとおりである。 1.16世紀後半に発布されたロンドン市議会の法令--特別行政区における公の場での演劇上演規制を述べたもの--に規定された、貴族邸で演じられるインタルードと公の場で上演される演劇との境界線が、テューダー(Tudor)朝からステュアート(Stuart)朝に移行するにしたがって暖昧になっていく過程および原因を解明した--(1)忠誠、奉仕、歓待などの封建的観念が社会から薄れていくにしたがって、インタルードを媒介にした、劇作家とパトロンのあいだを循環する演劇的ダイナミックスが、その基盤を失っていったこと、(2)インタルード上演という奉仕に対して支給される貨幣そのものが、忠誠などの封建的観念の土台を崩し、さらに上記の境界線を侵犯していったこと、(3)シェイクスピア(Shakespeare)の劇作品に具体化されているように、インタルードの構造および諸特性が、公衆劇場で上演される演劇に吸収されていったこと。 2.従来の研究では、ステュアート朝の宮廷仮面劇(court masque)が醸成する宮廷と舞台の理想的関係は遠近法を駆使した舞台装置により形成されたと指摘されてきたが、本研究はそうした理想的関係こそ、パトロンとインタルーダーのあいだに成立する関係の反復であることを解明した。また、インタルードに特徴的な演劇空間の位相--象徴的・再現的な劇空間である「座」(locus)と、非再現的な劇空間である「場」(platea)--が、公衆劇場では消失していく傾向があったのに対し、逆に宮廷仮面劇では積極的に活用されていたことを明らかにした。
|