研究概要 |
並列化数値積分法の一つとして、ピカール型の数値積分法(Fukushima 1997a)を考察した。ピカール型の積分法で基底関数をチェビシェフ多項式に取った場合、積分の収束は速いが、積分に必要な計算量が多項式の次数Nの2乗に比例して増加する。この計算量は小数自由度の力学系(惑星の公転や自転運動など)の数値積分の場合、無視できないほど大きい。と同時に、ピカール・チェビシェフ型の積分法では、これを繰り返し使用する、すなわち(数千周期などの)大きな刻み幅の単段法として使用する場合、その誤差の成長が従来型の数値積分法と同様に、時間の2乗に比例する欠点を共有している(Fukushima 1997b)。これらの欠点を解決するために、誤差が時間の1乗でしか成長しないことが保証されている線形多段法(Lambert & Watson 1976, Quinlan & Tremaine 1990, Fukushima 1998a) を拡張する(Fukushima 1999b)と共に、同法とピカール型積分法の統合の研究を実施した(Fukushima 1999a)。昨年度に開発した線形多段法の超陰公式(Fukushima 1999c)に基づき、平成11年度では、具体的な応用として非剛体地球の章動理論における変換関数作用素(これは、2階線形常微分方程式を解くことと数学的に同等である)を数値的に実行するスキームを構成することに成功した(Shirai & Fukushima 2000)。この手法により、従来不可能であった時間軸上での数値的畳み込みが可能となり、その応用は、単に章動理論のような自転運動の力学系のみならず、多くの分野で広く活用することが期待される。
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