本研究では、時間構造のある光源の2光子相関を測定するための電子回路を設計製作した。この回路は、2つの入力にたいする1GHz程度の帯域をもつ高周波増幅回路、低域および高域に独立に時定数をもつフィルター回路、それらの2つの出力を掛け算する混合回路、およびさらにそれを2乗する2乗回路から構成されている。この回路に擬似的な信号を入力してテストした結果、大きな信号に対しても正しい出力をあたえ、-80dbm程度の小さな信号にたいしても十分なS/Nを確保できることが確認された。 また、具体的な利用として、高速で回転する磨りガラスを透過させたレーザー光を、ビーム分割器で2つにわけ、2個のPINダイオードで検出し今回製作した回路に入力したところ、カオス的光源に特有な2光子相関効果が得られた。またこのガラスの回転数を変え、また回路のフィルターの時定数を変えたところ、2光子相関の振る舞いが見かけ上大きく変化することが見いだされた。 ガラスの回転数を変えることは、速い揺らぎの時定数を変えるだけでなく、回転周波数の整数倍の系統的時間構造を変えたことに等しいから、フィルターの時定数を適当に選ぶことにより、系統的時間構造による見かけ上の相関は取り除くことができることを証明したといえる。 今後この方法は放射光など、比較的高速の時間構造をもつ光源の「真の2光子相関」を計測する技術に発展させることが可能である。この意味で、本研究の初期の目的は達成されたといえる。
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