研究概要 |
有機化学において非常に重要な役割を果たしている累積二重結合化合物の高周期14族元素類似体の化学に関しては、その構造と性質の解明が世界的な興味の的となっている。しかし、これら高反応性化学種の安定な合成例は非常に少なく、本研究の合成目標であるl-ゲルマアレンについては、安定な単離例はもとより未だスペクトル観測の例もない。本研究では、申請者らがこれまで種々の高反応性化学種の安定化に応用してきた有用な立体保護基である2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル(Tbt)基の導入による速度論的安定化の手法を用いて最も基本的な含ゲルマニウム累積二重結合化合物であるl-ゲルマアレンを安定に合成し、その分子構造ならびに基本的な物性を明らかにすることを研究の目的とした。 ゲルミレン1[Tbt(Mes)Ge:;Mes=mesityl)と9-(dichloromethylene)fluoreneとの反応溶液に対し、ホスフィンテルリドを作用させることにより、対応する1-ゲルマアレン1,2-テルリド2を合成することに成功した。2のへキサメチル亜リン酸トリアミドによる脱テルル化反応を行ったところ、l3CNMRにおいて243ppmに目的化合物である1-ゲルマアレン3[Tbt(Mcs)Ge=C=CR2]のsp炭素に由来すると考えられるシグナルを観測した。またこの溶液にメタノールを加えたところ、Ge=C二重結合にメタノールが付加した化合物であるメトキシゲルマンが生成し、l-ゲルマアレン3の生成が確認された。また、ゲルミレン1と9-(dichloromethylene)fluoreneとの反応により、ビニル置換クロロゲルマン化合物5を合成し、5に2.2当量のt-BuLiを作用させることによっても、1-ゲルマアレン3が生成することを確認した。
|