研究概要 |
粒子径約50オングストロームのクラスタダイヤモンドを原料として,これを1500度以上の高温下で熱処理をすることにより,粒子径のそろったオニオン状構造を有するフラーレンである炭素超微粒子の合成を試み,得られた炭素超微粒子が分子サイズの潤滑剤として適用できるかどうかについて検討した. 真空排気および雰囲気調整ができる試料室を有するとともに1800度まで昇温が速やかに行える炉として,赤外線イメージ炉を選定した.そして,カーボン製のホルダ内に収めたクラスタダイヤモンドを,アルゴン雰囲気の大気圧下で加熱時間を変化させ,約1700度で熱処理を行った.熱処理を行った試料の結晶構造は,透過型電子顕微鏡により観察した.その結果,加熱時間1分で,クラスタダイヤモンドの一部がオニオン構造状のフラーレンに構造変化することがわかった.このフラーレンの粒子径はクラスタダイヤモンドの粒径とほぼ等しいことが観察された.加熱時間が10分では,ほぼすべてのクラスタダイヤモンドがフラーレンに変化するとともに,粒子径が増加するものが確認された.加熱時間30分でさらに粒子径が増加したが,透過型電子顕微鏡観察からは,その内部構造を特定することはできなかった.この方法で合成したフラーレンである炭素超微粒子は,ダングリングボンドをもたないため接触する固体との凝着を減らすことできると考えられ,潤滑剤として優れた特性を持つものと期待される.
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