研究概要 |
近年,生体において動・静脈瘤等の血管障害の病例が数多く報告され これを数値シミュレーションから流れ学的に解明しようとする試みがある.本研究はこの事象を実験から調査し,事象解明と数値解析結果の検証データの集積とを目的に開始した.本年度は,そのスタートとして,まず,種々の管路要素(直管,曲がり管,拡大・縮小管,分岐・合流管等)をもつ弾性管とその管路に任意波形の脈動流を流し得る脈動ポンプから成る管路系システムの設計・検討と装置製作を行った.心臓が作り出す様々な波形の脈動流を模し得るポンプとして,1台の主往復動ポンプと位相と振幅を変え得る4台の補助往復動ポンプから成る既存のポンプシステムが下大静脈での脈動波形を対象にしていたことから,これを冠動脈・大および細の動・静脈等の脈動波形を再現できるように波形データをフーリエ解析して次数を調査し,次数とその再現性との関係から台数・容量を求め,2台の補助ポンプの増設等を図り,ポンプシステムに改良を加えた.ついで,瞬時流量の計測精度を上げることが重要と考え,固定搬送波上での流量計測となる市販の電磁流量計にインバータを組込んで広範囲の脈動周波数と波形での計測が可能なように改良・検定を行った.現在,脈動波形を表すパラメータの入力により自動的に任意波形の脈動流が作り出せるように複数台のポンプの位相・振幅の運転制御機構を開発中である.これらを速やかに完了させた後,ポンプおよび電磁流量計を管径φ20mmの透明アクリル樹脂でできた管路システムに組み込み,所定の脈動波形と圧力波形が作り出し得ているかをチェックしつつ改善を加えてポンプシステムと計測系の確立を図り,種々の管路要素をもつ弾性管の管路系システムの構築と脈動流での諸特性実験を行っていく予定である.
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