研究概要 |
一般の食品貯蔵に比べて、野菜類の貯蔵には-1〜0℃,95〜100%とかなり厳格な高湿度氷温環境が求められ、通常は冷却しながら噴霧加湿を行うなど、その貯蔵環境維持に多くのエネルギーと複雑な制御を要している。初年度に行った「伝統貯蔵庫の貯蔵環境調査」より、寒地の特質でもある自然の冷却力を活かすには、厚い雪の断熱と巨大な地盤の熱・湿気容量が冬期間の凍結防止と低温・高湿度の維持に大きな役割を果たしていることが知れた。 最終年度に当たる本年度は、厚い断熱を施した水槽内蔵の試験庫において、水を直接冷却することによって庫内に氷水面を形成し、冷却と同時に高湿度が維持される人工の氷室環境の形成を試み、庫内温湿度・消費エネルギーの計測と野菜類の試験貯蔵を行った。 試験貯蔵庫は、深さ10cmの氷水槽を内蔵した、床面積:約1.3m^2、内容積:約1,170リットルの断熱庫である。一般の冷蔵庫では、おおよそ一週間が野菜保存の目安と言われているが、同庫内に小松菜、白菜、キャベツなど数種の野菜を貯蔵した結果、外観上は通常の冷蔵庫保存に比べて2〜5倍、種類によってはそれ以上の保存期間の延長が見られた。カットした野菜についても同様の保存性が確認された。また、ラッピングしたキャベツは9ヶ月を経過してなお新鮮な食味が維持されており、表葉は一部褐色化していたが内部は10ヶ月目の庫内清掃時点まで良好であった。 氷冷環境を維持するに要する電力は、夏場で約640watt/day(約25円/日)であり、極めて少ないエネルギーで高湿度の低温貯蔵環境の形成が可能であることが知れた。
|