光通信において、現在より短い距離により高い増幅が実現できれば、装置の小型化など多くの利点が考えられる。励起光強度・信号光強度に適応した希土類イオンの濃度分布・光路の断面積などを設計することができれば、小型化に求められる様々な条件を考える第1歩となると考えられる。従来の利得等の光増幅の特性の見積においては、希土類イオン間のエネルギー移動等は計算から求めることが難しく、実測に頼るしか方法がなかった。本研究では、ガラス中における希土類イオン間のエネルギー移動速度を中心にして、希土類イオンの発光特性を実測とともに、理論的な検討を試みた。ここでは、モデルケースとして、比較的高い濃度に希土類イオンを分散できるZBLAN(ZrF_4系フッ化物ガラス)に着目し、このガラス中のEr^<3+>の吸収スペクトル・蛍光スペクトルを実測及び計算から求め、さらに母材に依存する多フォノン緩和速度を実測から概算し、吸収スペクトルと蛍光スペクトルの重なりと希土類イオン間の距離に依存する希土類イオン間のエネルギー移動速度を見積もった。これに、励起光の波長と強度を設定して、rate方程式を解くことにより、種々の条件における発光強度の時間変化や光増幅特性を見積もることができる。最も基本となるEr^<3+>の添加濃度による蛍光寿命を実測と計算により求めた。希土類イオン間の距離と希土類イオン濃度の関係が明確ではないが、1つの準位において実測される蛍光寿命と計算結果を対応するように、設定することにより、他の準位の寿命のEr^<3+>濃度依存性が再現でき、また、他の希土類イオンとしてPr^<3+>を加えた場合においても実測と計算が対応することがわかってきた。
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