研究概要 |
Al_3TiおよびAl_3Zr(正方晶のそれぞれDO_<22>およびDO_<23>型構造)のAlを遷移金属(たとえば、Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Pd,Ag)によって部分的に置換すれば、それぞれ立方晶のLl_2型(Al,M)_3Tiと(Al,M)_3Zrが形成される。これら立方晶のtri-aluminidesは、遷移金属のd-bandによる伝導電子のresonance scatteringに起因する興味ある電気抵抗異常を示し、その比抵抗は他の金属系抵抗材料に比べかなり高く、電気抵抗の温度係数が非常に広い温度範囲にわたり小さい。本研究では、これらtri-aluminidesを抵抗素子材料として用いるための基礎的知見を蓄積することを試みた。 その結果、(1)添加する遷移金属の組み合わせにより、抵抗値および温度係数を広い範囲で変化させることができる、(2)得られた温度係数を広い温度範囲で維持できる、(3)これらtri-aluminidesは広い温度範囲にわたり安定である、(3)特に(Al,M)_3Tiは高温においても耐酸化性に優れている、(4)ほとんどのtri-aluminidesは脆い化合物であるが、一部のtri-aluminides、特にクロムを添加したものには曲げ変形能がある、こと等が明らかとなった。 今後、スパッタリングによる(Al,M)_3Tiおよび(Al,M)_3Zr系化合物薄膜の形成を重ね、(1)溶製による化合物と同じ電気抵抗挙動を示す薄膜を容易に形成する技術を確立すること、(2)スパッタリングによる薄膜とバルク溶製材の違い、特に単相領域の広がりの違いを定量的に把握すること、(3)薄膜状態での曲げ変形能を改良し、薄膜としての使用に耐える程度の変形能を付与すること、を試みる。
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