| 研究概要 |
超音波法は材料内部の欠陥や損傷を非破壊的に評価できる有力な方法として研究,開発が行われている.従来,超音波を利用した欠陥評価法としては,材料底面からの反射波の解析により得られる音速や減衰率,周波数解析結果等を利用する方法や,材料内部の欠陥からの後方散乱波を周波数解析して求めたノイズエネルギ等をパラメータとする方法が提案されている.これらの方法は超音波が通過した領域の平均的な欠陥密度等の情報を得るというものである.実際の構造物の場合,欠陥が存在または発生する箇所は溶接部や応力集中部等であるため,欠陥が局所的に存在したり,分布が不均一あると考えられる.従って,欠陥密度の分布に関する情報も含んだ欠陥評価法の検討も必要であると考えられる.ウェーブレット解析は時間的情報を失うことなく周波数解析を行うことができる信号処理方法であり,本方法を超音波解析に利用することにより欠陥密度等の分布を考慮した評価の可能性があると考えられる.
本研究では超音波の後方散乱波をウェーブレット解析することによる欠陥評価法の開発を目的とした.供試材には様々な相対密度のAl-Si粉末焼結体を用い,同材に20MHzの縦波超音波を水浸法で入射することにより得られる欠陥からの後方散乱波を測定した.測定結果のウェーブレット解析結果に,別途行った数値解析により求めた平均欠陥直径および密度と後方散乱波の周波数特性の関係を利用することによる粉末焼結体の評価について検討した.その結果,超音波後方散乱波をウェーブレット解析することにより,材料内部の欠陥直径や密度の推定及びそれらの材料の深さ方向の分布推定ができる可能性があることが明らかとなった.
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