研究概要 |
自己免疫疾患(SLE)患者血清中の自己抗原複合体を分離・定量するために、マイクロチップのシリコン膜上に抗DNA抗体を固定化してf moleの超微量自己抗原を特異的に高速分離するアフィニティーエレクトロフォレーシス(AEP)を開発する目的で研究を行った。現在までのところ以下の成果を得ており、一部を発表した。1)十分に研究説明を行った後、同意が得られたSLE患者から血液を採取して調製した新鮮血清中の抗DNA抗体を2次元電気泳動法で分離したところ、ループス腎炎を併発している患者血清中にヘパリンと強く結合する等電点の高い抗DNA抗体分子種が特異的に認められた。この抗体分子が腎糸球体基底膜に存在するグリコサミノグリカンと複合体形成して、基底膜の炎症を惹起することが示唆された[Electrophoresis(1998)19,1511-15]。2)2次元AEPを用いて血清中の抗原特異ポリクローナル抗体をモノクローナル抗体分子種に分離し、in vivoでの抗原刺激による抗体のサブクラス変換や親和性成熟を明らかにした[J.Chromatography B(1998)715,125-36]。3)数nLの血液中に含まれる超微量の抗体を同定するため,AEPで分離した抗体分子をポリビニリデンヂフルオリド(PVDF)膜に転写した後に、免疫化学蛍光発光法を用いて1ng以下の抗体を同定した[Electrophoresis(1998)19,1506-10]。4)マイクロチップAEPのモデル実験としてキャピラリー電気泳動法による血清中の微量成分の定量法を確立した[Methods in Molecular Medicine(1999)27,掲載予定]。5)マイクロチップのシリコン薄膜上にDNA断片あるいは抗DNA抗体を固定化するためのシリコン膜表面の化学処理方法についてアミノアルキル化の有用性を検討しているが、固定化率や処理後のブロッキング方法に満足できる結果が得られていない。
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