研究概要 |
蛍光X線にはラジェーティブ・オージェ特性X線と呼ばれる微弱な特性X線がある.1990年にダスグプタはラジェーティブ・オージェ特性X線がバーチャル・ラマン効果を示し,そのためにX線レーザーとして用いるのに有望であるとの見解を述べている.我々はこのラジェーティブ・オージェ特性X線中にEXAFS(X線吸収微細構造)が現れることを発見し,蛍光X線発生原子と近接の原子との間に量子的干渉効果があることを初めて示した.また,この現象を利用し,従来,シンクロトロン放射光が必須とされてきたアモルファス材料等の局所構造解析に応用可能であることを示した. 一方,我々はX線の全反射現象を利用した材料評価法の開発に関する研究を行ってきたが,X線レーザー開発の基礎研究としてX線の全反射現象に新たに着目した.白色X線を極低角で鏡面試料に照射した場合,全反射臨界エネルギーより僅かに高いエネルギーのX線は物質の極表面を伝搬する.この表面伝搬X線を半導体検出器を用いてエネルギー分析をすることにより,表面の密度測定が可能である.我々はPt薄膜から出射される表面伝搬X線を観測することにより,精度良く薄膜の密度を決定できた.また試料に膜厚数十nmの有機薄膜(パラフィン)を用いた場合,薄膜の側面から単色性の高いX線伝播X線が出射されることを発見した.X線ビームの可干渉性はビームのサイズに反比例するため,膜厚数十nmの薄膜から出射されるビームは極めて干渉性の高いビームといえる.今後,最適な高次構造を持つ薄膜を作成することにより,出射されるビームの強度の増加,干渉性の改善できるという指針も得ている.
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