研究概要 |
電極や触媒の表面に不斉な有機分子を固定して立体選択的な反応を誘起させる研究は数多いが、表面におけるこれらの分子の配列構造は明らかになっていない。一方、不斉分子が物理吸着した単分子層の二次元不斉構造については最近いくつかの報告がある。ここでは、共有結合により表面に固定した分子が形成する二次元不斉構造すなわち「不斉表面」の構築をめざして自己組織化法による電極表面の修飾を行った。 修飾分子として光学活性軸不斉化合物である1,1'-binaphthalene-2,2'-dithiol(BNSH)の(R)体と(S)体を用いた。約1μmol dm^<-3>のBNSHと10mmol dm^<-3>KOHを含むエタノール溶液に(111)ファセットを持つ金電極(Clavilier法)を1〜10分浸漬した。STM(Digital lnstruments,Nanoscope E)測定は空気中で行った。 (R)あるいは(S)一BNSHで修飾した金表面をSTMで観察すると、規則的配列構造を持つ最大25nm四方程度のドメインが認められた。明るい丸い粒と空孔と思われる黒い部分の規則的な配列が存在する。この配列構造における単位格子はR体、S体のどちらを修飾した場合でも1辺が約1.6nm程度の菱形であった。白い粒状の像の大きさはBNS口中のひとつのナフチル基に相当する。丸い粒6個を含む三角形3つが空孔をとり囲んでいると考えると、三角形の配置はR体では左回り、S体では反対方向の右回りと互いに鏡像関係にあり、二次元の不斉構造が形成されていることが明らかになった。三角形はスクリュー状にナフチル基が重なりあうように配列した三つのBNSH分子で構成されており、R体とS体ではナフチル基が重なる方向が逆方向であることがわかった。ラセミ体で修飾すると上でのべたR体とS体のドメインが混在することがわかった。
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