研究課題/領域番号 |
10875171
|
研究種目 |
萌芽的研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
工業物理化学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 和仁 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00172859)
|
研究期間 (年度) |
1998
|
研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
|
配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1998年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
|
キーワード | 分子性結晶 / 励起子-格子相互作用 / 自己束縛励起子 / 格子歪み / 光エレクトロニクス材料 |
研究概要 |
本研究の目的としていた光による結晶表面における構造の制御を行うべく、弱いファン・デル・ワールスカにより結合している分子性結晶に注目し、その表面でのミクロな光誘起分子配列変化に起因するマクロな構造変化を、主に原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察した。 分子性結晶として、強い励起子-格子相互作用のため励起子が自己束縛されるα-ペリレンの単結晶を減圧昇華法を用いて作製し、結晶構造はXRDにおいて確認した。また、,AFM観察はコンタクトモードで行い、光照射前後の表面構造を観察した。 得られた単結晶において(001)面では単原子層のテラスからなるステップが数多く存在している。この表面にある一定強度の光を一定時間照射した後AFMにより観察を行うと、テラスの端側が照射時間に応じて盛り上がるという構造変化が観察された。この構造変化は自己束縛励起子に強く関係しているものであることが他の実験より確認された。この構造変化における光強度依存性を確認した結果、光強度にしきい値が存在する上に、結晶性と密接な関係が有ることが示された。 この構造変化がテラスの端に限って生じる理由として層構造の端は結晶構造の中で最も分子の自由度が大きいという構造的要因と、自己束縛励起子が層構造のような界面に存在することで並進運動の自由度が低下し、より安定化するというエネルギー的要因の二つの要因が考えられる。また、光強度にしきい値が存在したことから、自己束縛励起子の集団的な相互作用が構造変化を誘起したことが示唆されたため、結晶に欠陥サイトが多く存在すると自己束縛励起子同士の相互作用を阻害するため構造変化を起こしにくくなることも明らかとなった。 以上に示した本研究を行ったことで分子性自己束縛励起子に起因する僅かな格子歪みでも、それが集団的に相互作用することにより結晶表面構造変化を誘起することを初めて示すと同時に、自己束縛励起子の振る舞いについても新たな知見が得られた。 この結果はこれまでの表面における光異性化反応を見いだしたことに端を発し、新たな自己束縛励起子に起因した光による表面構造変化を見いだしたことで、最終的な目標としている高感度光スイッチングなど数限りない次世代の光エレクトロニクス材料開発に向けて大きく前進したものと考えられる。
|