研究概要 |
1. 本研究は新規ハイブリッド金属クラスターを設計し、生体の基幹物質である糖質をアルドースからケトースへの異性化を促進する新反応場の構築と作用メカニズムの解明を行い、さらには将来の新しい有機化学工業への展開を目的としている。 2. trenと糖質(D-mannose,L-rhamnose)の脱水縮合によってN-グリコシド配位子(aldose_3-tren)を合成し、これにMnX_2(X=Cl,Br,NO_3,1/2SO_4)を作用させることにより錯体を合成した。単核錯体、橙色三核錯体及び紫色三核錯体が得られた。錯体は元素分析、UV-Vis、CD、磁化率、ESR、X線結晶構造解析によりキャラクタリゼーションを行った。 3. X線結晶構造解析から単核錯体のMn^<II>イオンはaldose_3-tren配位子によるC_3対称を持つob型構造のN_4O_3型7配位面冠八面体構造の糖質が互いに分子内水素結合で集合した閉じたかご型構造ob型構造ではをとっていることが判明した。橙色三核錯体はMn^<II>Mn^<III>Mn^<II>の混合原子価イオンがほぼ直線上に並んだ三枝構造を有し、2分子の単核錯体が中心のMn^<III>イオンを糖質でアルコキソ架橋している構造である。中心マンガンは3価には珍しい四角錐型5配位構造である。トリエチルアミン存在下で単核錯体から三核錯体が生成することより、2分子の単核錯体の糖質部分がMn^<III>イオンを捕捉することによって三核錯体が生成するものと考えられる。紫色三核錯体の架橋糖質がアマドリ転移によりβ-フラノースに異性化した構造である。架橋糖質のみが異性化していること、アルコキソ架橋Mn三核構造が保持されていることから異性化は金属二核中心上で進行すると推定している。糖質が架橋した錯体の構造はキシロースイソメラーゼの推定メカニズムの構造に類似しており、酵素モデルとしてその反応機構を明らかにすることは大変興味深い。
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