研究概要 |
(1)藻類および細菌類のシトクロム遺伝子のラン藻・植物への導入と発現の検討(分担-奥): (i)植物のモデル実験として、宿主-ベクター系が確立されており、培養時間が短いラン藻(Synechocystis6803)に紅藻(Porphyrayezoensis)のシトクロムc_6遺伝子を導入・発現の検討を行った。しかし、シトクロムc_6はタンパク質部分とヘム部分の二成分から構成されているため、その発現は難しく、ラン藻において発現した組換えタンパク質はヘムが結合せず、一酸化窒素捕捉機能を有していないタンパク質であった。今後、タンパク質にヘムを結合させる酵素遺伝子の導入などを行い、種々検討する予定である。(ii)植物は、導入系が最も確立されているタバコを対象とする予定であったが、(i)をさらに検討する必要があったため、植物での発現を検討することが出来なかった。 (2)トランスジェニック植物の二酸化窒素汚染好性および高タンパク質含有の検討と評価(分担-奥、西尾): トランスジェニック植物をNO_2ガス雰囲気下におき、野生型とのNO_2汚染好性およびタンパク質含有量を評価する予定であったが、(1)での検討がさらに必要あった為、本課題を検討することが出来なかった。 尚、紅藻(Porphyra yezoensis)シトクロムc_6の優れた一酸化窒素捕捉機能を明らかにするために、このタンパク質の立体構造解析を行ったところ、1.57Åという高い解像度で解析することに成功した^<1)>。この構造は「IGDV」のProtein Data Bank codeで登録され、紅藻由来のタンパク質としては初めての解析例である。この結果より、紅藻(Porphyra yezoensis)シトクロムc_6の高い酸化還元電位は、ヘム周辺に存在する水分子によるものであり、一酸化窒素捕捉に関与する部位は、生体内における電子供与体との相互作用部位である酸性パッチのGlu68であることを立体構造から推定した。今後、部位特異的変異作製法を用い、さらに検討を行う予定である。 1)Yamada,S.,Acta Crystallographica Section D,56,1577-1782(2000)
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