平成10年9月22日本州に上陸した台風7号は、近畿から中部、北陸地方にかけての森林に大きな被害をもたらした。被害の態様から森林の風荷重に対する適応のメカニズムがある程度推測できると考えられるので、まだ中間段階ではあるが、調査の際に観察された今回の風害の特徴を述べる。 1. 広葉樹は常緑、落葉ともに、老木が単木的に破壊された程度で被害は少なかった。 2. 針葉樹人工林(スギ、ヒノキ)の被害が著しかった。以下はすべて針葉樹人工林の場合について記す。 3. 30年生から50年生の伐期に近い森林が、特に大きな被害を受けた。 4. 今回は根返り、幹折れのほかに、強く曲げられた木が多数あった。 5. 林縁木は正常でも、森林の内部で曲がったり倒れたりした木が随所に見られた。 6. 神社や仏閣のスギの大径木も、大きな被害を受けた。 7. 風が正面から当たる地形や風の通路では、全山で壊滅的な風倒木が発生したのに対し、風の陰になる地帯では全く被害がなかった。 今後さらに考察を進めねばならないが、しばしば指摘されるように育林の手入れが十分行われなかったことが、やはり被害を大きくした原因ではなかろうか。例えば折れずに曲がるのは細長脆弱に過ぎる樹形の表れ、林内のみに発生する風倒木は劣性木の除、間伐の不実行の結果と推測される。 樹冠の相互支持効果については、林内で単木的に風倒が発生しているところからみて、あまり効果はなかったようである。それよりも樹冠のうっぺいによって風を林内に吹き込ませない機能の方が役立っていると思われる。
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