研究課題/領域番号 |
10877015
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
薬理学一般
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹島 浩 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70212024)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1998年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 神経ペプチド / ノシセプチン / ノシセプチン受容体 / オルファン受容体 |
研究概要 |
ノシセプチン(Nociceptin)は最近単離された神経ペプチドで、その生理的重要性は十分には明らかにされていない。本研究ではノシセプチン受容体欠損マウスの作製と解析により、ノシセプチンの生理機能の解明を目指した。まず、ノシセプチンが海馬領域にも高発現することから記憶学習などの機能に関与すると予想し、ノシセプチン受容体ノックアウトマウスを利用した行動学的実験と電気生理学的実験を遂行した。行動学的実験においては、水探索学習行動、モリス水迷路学習と受動回避学習試験の3種の異なった実験系において、ノシセプチン受容体欠損マウスは正常マウスよりも記憶学習能力が高いことが明らかになった。電気生理学的解析においては、変異マウスの海馬CA1領域の長期増強の振幅は正常マウスのものと比較して上昇していることが明らかにされた。以上の結果から、ノシセプチンによる情報伝達は正常個体においては記憶学習と長期増強の負の調節をすることが強く示唆された。一方、脳内投与されたノシセプチンは疼痛闇値低下作用を示すが、ノシセプチン受容体欠損マウスでは疼痛閾僅の異常は見い出せず、ノシセプチンの薬理作用と変異マウスの表現系に矛盾が生じていた。この関係を明らかにするために、ノシセプチン受容体アンタゴニスト活性を有するオピオイド系薬物(naloxon benzoylhydrazone)を見い出し、正常マウスとノシセプチン受容体欠損マウスに対するその薬理作用を検討した。その結果、通常ではノシセプチンによる情報伝達系は生理的疼痛閾値調節に寄与しているが、受容体欠損マウスにおいてはノシセプチン情報伝達の欠失による異常を他の情報伝達系により打ち消していることを明らかにした。以上の結果は、ノシセプチン情報伝達を阻害する薬物は優れた鎮痛薬や記憶学習強化薬になりうる可能性を実験的に示している。 さらに、新規の神経ペプチドを単離することを目的に、複数のリガンド不明の受容体様分子のcDNAクローニングをラットまたはマウスの中枢系より行い、培養細胞に導入し、cDNA恒常発現細胞株を樹立した。現在、脳ペプチド分画をその細胞に反応させて生じるcAMP濃度や細胞内力ルリウム濃度の変動を指標に、それぞれの受容体様分子に対応する神経ペプチドの単離を試みている。
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