研究概要 |
生体内のほとんどのアミド化ペプチドは、peptidylglycine α-amidating monooxygenase(PAM)によって生成される。ところが、これとは異なる機構によるC端アミド化ペプチドが脳内に存在することが、近年Tatemotoらによって発見され、それぞれMPA-12,-14,-16と命名された。これらの生成機構には、その前駆体であるミエリン塩基性タンパクの構造から、3つの可能性が考えられる。すなわち、1)C端Tyr、AlaへのNH_2OH,NH_3を供与体とした付加反応またはアミノ転移反応、2)C端Leuの酸化的脱アルキル化(生理活性アミド化ペプチド生成と類似反応)、3)C端Tyr、AlaにGlyが付加後、PAMによってアミド化される(グリシンN-アシル転移酵素を介する脂肪酸アミド生成と類似反応)機構である。そこで、MPA-14前駆体アナログとして_<D->YKY,_<D->YKYL,_<D->YSKYLを合成し、これらをアミド化する酵素活性が、ラット脳に存在するかどうかを検討した。 それぞれの反応機構を考慮し、1)NH_2OH,NH_3,Asp,Gluなどの基質とピリドキサルリン酸,FAD,NADH,ATPなどの補酵素を添加した系、2)アスコルビン酸,NADH,FADH_2,グルタチオン,還元型プテリン,Cu^<2+>などのcofactor、もしくはNAD^+,NADP^+,FAD,FMNなどの酸化型補酵素を添加した系、3)GlyとCoAを添加した系に関して、ラット脳ホモジェネートおよび脳ミクロゾーム画分に関し、アミド化酵素活性の有無を系統的にスクリーニングした。その結果、どの系においても期待されるアミド化ペプチドの生成を認めなかった。以上の結果から、今後の検索のためには、前駆体アナログとすべき合成基質の種類をさらに検討し、用いるべき酵素標品の部分精製にも検討を加えていかなければならない。
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