研究概要 |
我々は、過酸化水素により活性化されEGFレセプターなどのチロシンリン酸化するキナーゼを見い出し、酸化ストレス応答チロシンキナーゼOxidant-Stress activated tyrosine Kinase:OSKと名付けた。本研究では1,OSK活性が約80KDaの過酸化水素依存的にチロシンリン酸化される蛋白の出現と一致すること、2,SrcキナーゼのN端を認識する抗体と抗ホスホチロシン抗体がこの蛋白を認識すること、3,レセプター型チロシンキナーゼの活性化に必須のMnイオンが必要であること、4,Srcキナーゼ阻害剤HerbimycinやGenisteinはOSKを阻害しないことを明らかにした。従って、OSKはSrcと構造的な類似性を示すが異なる特性を持つチロシンキナーゼであると結論した。また、EGFによるA431細胞の増殖停止および細胞死誘導に対して検討し、1,増殖停止にはEGF刺激後速やかに転写産生されるCDK阻害タンパクp21/WAF1が必須であること、2,EGFによる増殖停止にはSTAT1αとNFκBが協調的に作用すること、3,高密度状態での細胞死誘導にもNFκBがSTAT1αの発現を誘導すること、4、高密度状態では経時的にSTAT二量体の構成が変化することをを明らかにした。従ってEGFレセプターからのシグナルがSTAT二量体構成の変化により、p21/WAF1による増殖停止からICEプロテアーゼの発現による細胞死へと変換されると示唆された。
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