研究概要 |
今年度の研究では,caveolin-1,-2が大部分の細胞質で陽性を示すことを確認した甲状腺,副甲状腺,副腎皮質の中から,甲状腺の正常,過形成,腫瘍について症例数を増やしてcaveolin-1、-2の発現状態を検索した。しかし,その発現頻度および強度は症例によってばらつきが大きく,有意な統計結果を得ることが出来なかった。形態的な変化よりも機能との直接的な関連が示唆され,患者の血中ホルモン値との比あ較やISHなどを用いてホルモンの産生状態との相関を検討する必要があり,現在準備中である。 一方,下垂体過形成状態においてはcaveolin-1が多数の核が陽性で他臓器と解離する結果を得ていた。この原因は,技術的な問題点を含めて解明中であるが,一部の膜蛋白が核に存在(移動)するという報告もありシグナル伝達において有意な現象である可能性を否定できない。人体例では材料が限定されるため下垂体腫瘍株GH3を用いて蛋白の存在とその局在を種々の条件で検索している。 caveolin-3については検索したすべての内分泌細胞で陰性であったが,これまでに報告されていた骨格筋・心筋以外に、中枢神経白質においても陽性を示した。その局在を部位別に抽出したラット脳を用いてウエスタンブロットを施行したところcaveolin-3タンパクの存在を嗅脳と橋に確認した。なお,1998年〜1999年にグリア細胞やシュワン細胞にcaveolinの存在が報告されているが,局在についての報告はない。
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