研究概要 |
1.カルポニンh1欠失マウスの創傷部位での線維化が強い傾向にありこの原因を細胞の増殖能に着目して明かにするために,カルポニンh1欠失マウスより線維芽細胞を培養し,増殖をカルポニンh1正常マウスとの間で比較した。その結果,カルポニンh1欠失マウス由来線維芽細胞の増殖が必ずしも正常に比べまさっているということはなかった。この事実はin vitroにおける細胞増殖の制御要因がin vivoとは異なるか,増殖以外の要因が線維化を促進していると考えられた。現在、TGFβに対する感受性等について検討を進めている。 2.線維芽細胞や他の間葉系細胞である平滑筋細胞の増殖に対するカルポニンh1の関与を調べる目的で,種々の形質転換した線維芽細胞や平滑筋肉腫細胞にカルポニンh1遺伝子を導入した。その結果受容細胞に依存する結果が観察された。すなわち1)カルポニンh1の強制発現で細胞の分化形質が顕著に誘導され,造腫瘍性が失なわれる場合(子宮筋肉腫の場合),2)in vitroでもin vivoでも増殖性が昂進するが(HT1080の場合),細胞接着性が増強し,細胞運動性は低下する場合,3)in vitroでは細胞増殖がやや促進されるが,in vivoでは増殖性が抑制される場合(src癌遺伝子で形質転換したラット3Y1線維芽細胞の場合)など,種々の現象が観察された。(尚、平滑筋型αアクチン遺伝子導入でsrcによる形質転換細胞のin vitro、in vivoの増殖運動が全て抑制されることを観察した。) このようにカルポニンh1の生物学的影響が発現する細胞によって異なる事実をふまえ,カルポニンh1の細胞骨格制御や増殖制御への関わり方は一様でなく,細胞内のどのような分子とどのように関わるのかを個々の場合で明かにしていくことが今後の課題といえる。
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