研究概要 |
神経反発分子として見出されたセマフォリン分子はファミリーを形成する。その内の1つであるマウスセマフォリンG(M-SemaG)はヒトCD100のマウスホモログであり,PMA(phorbol myristate acetate)とカルシウムイオノフォアとでT細胞を活性化するとT細胞の細胞膜上に発現するM-SemaGが一過性に減少した。M-SemaGはモノマーとダイマーの2つの形態で存在し,活性化刺激により減少するのはダイマーのみである。この減少は表面標識と免疫沈降によりダイマー型M-SemaGが膜表面でプロテアーゼで切られて遊離するためであることが判明した。M-SemaGの細胞膜からの遊離はメタロプロテアーゼインヒビターであるオルトフェナンスロリンやEDTAで抑制されたことから,メタロプロテアーゼかカルシウム依存性プロテアーゼである可能性が示唆されたが,細胞外を認識する適切な抗体ができなかったため遊離されたものの同定ができなかったので,さらに検討を加える必要がある。M-SemaGの免疫系や神経系における作用についてはなお不明であるが,M-SemaGは刺激が入るとT細胞とB細胞間の接着と相互作用に関与するCD40シグナルを増強しT細胞とB細胞をより強く接着させ,その結果続いてM-SemaGがプロテアーゼによって遊離しT細胞表面のCD40Lがdown regulateされてCD40シグナルを急速に弱めることにより,T細胞とB細胞間を分離させ,次の分化のステップに進むものと考えられ,プロテアーゼが CD40シグナルを修飾する1つの要素になっていることが示唆された。 また,本研究でM-semaGが別のセマフォリン分子の受容体であるニューロピリンとは結合しないことを明らかにした。
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