研究概要 |
持続的低酸素状態では換気反応は2相性の反応を呈することが知られている。第1相の換気増加に関しては、延髄孤束核中のグルタミン酸の増加が重要な役割をはたすことを我々は以前報告した(Mizusawa et.al.,J.Physiol.478,55-65,1994)。第2相の換気減少は低酸素換気抑制といわれ、主に神経伝達・調節物質の変化によっておこると考えられている。本研究では、この低酸素換気抑制に関して、延髄孤束核での抑制性神経調節機構の関与を明らかにするため、持続的低酸素下での同部におけるGABA放出の経過を測定し、また種々のGABA作動薬および拮抗薬をマイクロインジェクションし、換気反応に与える影響を検討することを目的とした。 1)低酸素曝露時の延髄孤束核におけるGABAの反応 無麻酔、無拘束のラットを10%O_2に急性暴露し、in vino microdialysisi法により延髄孤束核でのGABA濃度を測定した。低酸素負荷0〜15分では、GABAの有意な増加は見れなかったが、30〜45分では、負荷前に比べ約2倍に増加していた。 2)GABA作動薬.拮抗薬のマイクロインジェクション A.GABA拮抗薬 10%O_2負荷後、低酸素換気抑制が生じている40分の時点で、GABA-A受容体拮抗薬の(-)-bicuculline methiodide、GABA-B受容体拮抗薬の2-OH-saclofen、CGP-35348の延髄孤束核にマイクロインジェクションした。これらにより分時換気量はbicucullineで218mLから292mLへ、saclofenで203mLから269mLへ、CGP-35348で201mLから282mLへと有意に増加した。 B.GABA作動薬 室内気下でGABA-A受容体作動薬のmuscimol、GABA-B受容体作動薬のbaclofenをマイクロインジェクションし、10%O_2に暴露すると、低酸素負荷による最大換気量の変化は対照群で226mLに対し、muscimolで127mL,baclofenで142mLといずれも有意に減少させた。 これらより延髄孤束核でGABAは換気抑制的に作用しており、低酸素換気抑制にGABA-A,GABA-Bergicなメカニズムが関与していることが示唆された。
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