研究概要 |
昨年度に引き続きIL-4によりヒトマスト細胞のFcεRIαが発現増強するシグナル系を各種の阻害剤を用いて解析した。マスト細胞をIL-4で培養する系にHydrocortisone,Disodium cromoglycate,Tyrosine kinase inhibitor,PI-3-kinase inhibitorなどを添加してFcεRIα鎖の発現を検討すると、Tyrosine kinase inhibitorとの共培養により明らかにFcεRIα鎖の発現が抑制されることが判明した。PI-3-kinase inhibitorであるWortmanninではFcεRIα鎖発現に変化は認められなかった。阻害剤を用いた実験及びStat6がリン酸化される事実などから、FcεRIα鎖発現誘導の鍵となる分子の一つは恐らくJak3と考えられるが、今後その確証を得る必要があると考えている。申請者らはまた、IL-4レセプター(IL-4R)単独あるいはIL-4Rシグナルとその他のシグナルが共に入った際に、アレルギーに関与する分子が表出されるという普遍的現象が起きることに着目し、B細胞をモデルとしてその分子機構を解析した。その結果、B細胞のIL-4RとCD40を共に刺激し培養することにより、Ku70/80というDNA切断修復や各種分子の発現調節に関与する分子が細胞質内から核内に移行することを見出した(Immunity,1999)。その結果、B細胞ではIgE産生や低親和性IgEレセプター(CD23)の発現が誘導される。マスト細胞においても同様にKu分子が関与している可能性を示唆する所見を得、現在検討中である。
|