研究概要 |
我々は,乳癌細胞に対するエストロゲン刺激により,p53の発現量が増加し,これがMDM2の発現量により調節され,さらにMDM2自身がエストロゲンレセプターに対して機能促進作用を持つことを示した。そこで,今年度はさらに詳細に乳癌細胞におけるMDM2の転写機能促進作用機構の解析を行った。 1)エストロゲン刺激により、mdm2高発現乳癌細胞の顕著な増殖能の亢進を認め、この機能獲得においてp53依存性は否定的であった。 2)エストロゲンレセプターとMDM2の直接作用をGSTプルダウンアッセイにて、エストロゲン依存性の結合量の亢進を初めて認めた。 3)MDM2はp53の特異的ユビキチン化を引き起こしp53発現量を抑制し、細胞増殖に深く関与している事が広く知られているが、in vivoにおいて、MDM2がエストロゲンレセプターに対してユビキチン化を引き起こさない事を証明した。 4)MDM2は2カ所のプロモーターを持つ事が知られており、そのうちイントロン1に存在するプロモーター2(P2)は野生型p53に依存的である。乳癌細胞においてP1由来とP2由来のmdm2mRNAのRT-PCRを行ったところ,p53の影響よりもエストロゲンレセプター発現量依存的にP2由来のmdm2発現量が増加していた。これらは、p53以外のmdm2高発現機構の存在が示唆され、現在mdm2上流のプロモーター領域の機能解析を行っている。
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